<第1話 2002年4月>
私は、「広島さつきセンター」を経営している大場幸雄と言います。年齢は、47才。妻と5人の子供がいます。
さつきを始めて、25年。正月の2日間を除く、毎日店を開け、営業をしています。900坪の園内には、約1万本のさつきがあります。 また、ところどころにテーブルセットを置き、お客様にゆっくりとした時間を過ごしていただけるよう環境整備に努めています。
最 近は、さつきそっちのけで、こっているものがあります。それがメダカです。メダカと出会うきっかけはこうでした。ある日、知人からダルマメダカが送られて きました。最初は、メダカには全く興味がなく、店の片隅に置いておきました。ところがどうでしょう。そのメダカを売ってくれというお客様が現れました。私 は、言われるがまま販売をしました。その後も、ダルマメダカを売ってほしいというお客様が後を絶ちません。当時は、ダルマメダカを1匹2500円で販売し ていました。ところが、この値段で、どんどん売れるのです。そこで思いつきました。メダカがこんなにも高価に取り引きされるのであれば、自分でメダカを生 産してみようと。卸業者から、ダルマメダカを仕入れ、交配してみました。するとどうでしょう。メダカはどんどん卵を産み、稚魚があっという間に殖えまし た。
しかし、事はそううまくいくはずはありません。せっかく生まれた稚魚は、1ヶ月後に全滅。一夜にして、全部の稚魚が死んだのです。私 は、途方にくれました。そして思いました。ダルマメダカが1匹2500円で取り引きされるのも当たり前です。素人では、そう簡単に殖やせないのです。それ からです。私は一生懸命メダカについて勉強し、研究してきました。この間の経緯については、また次号の「メダカの館 通信」で書くことにしましょう。
そのことはさておき、今や年中メダカの生産ができるように体制を整えました。約60個の水槽には、30種類のメダカ、数万匹が泳いでいます。
朝5時には、起床し、メダカハウスに直行します。さつきは、そっちのけになってしまいました。夜9時まで1日の大半をメダカハウスで過ごします。目下の目標は、新種のメダカをつくりだすことです。わくわくドキドキの毎日を過ごしています。
お近くの方は、一度広島さつきセンターにお立ち寄りください。メダカ談議に花を咲かせましょう。
<第2話 2002年5月>
さて、前回の「メダカの館 通信」では、私がメダカの生産販売を始めるきっかけや当店の現状についてお話しました。今回は、私自身の苦労話に少しだけ付き合っていただければと思います。
最初に仕入れたダルマメダカは順調に卵を産み、稚魚が育つまでにいたりました。しかし、1ヶ月後、稚魚は全滅してしまいました。その原因はなかなかわかりませんでした。後になって、水槽に入れている水草が原因であることが判明しました。
当 初はダルマメダカの産卵に水草を使っていました。ダルマメダカの水槽に水草を入れておき、メダカが産み付けた水草を別の水槽に移して孵化させる方法をとっ ていました。水草は光合成をしますから、当然、副産物である酸素を出します。ただし、問題は夜です。水草は日光の当たらない夜は光合成をしません。した がって、酸素を出しません。そればかりか、水草は呼吸をします。呼吸とは、酸素を取り入れ、二酸化炭素を出すことです。
夜間、水草は酸素を出さないばかりか、逆に水中の酸素を奪っていたのです。そのため稚魚は酸欠となり、一夜にして全滅してしまったのです。
その後、私はあちこちのメダカ販売店を見て歩くことにしました。店員にメダカの飼育方法について、あれこれ聞いて歩く毎日が続きました。しかし、肝心なことは企業秘密でなかなか教えてはくれません。
ある日、メダカを生産している方に、電話であれこれ聞いていたときのことです。私は、実際に飼育現場を見たくなりました。その旨電話で話すと、相手の方は、あっさりと、「いいですよ」とおっしゃってくださいました。
私 は受話器を置くと、店の仕事は従業員にすべて任せ、車に飛び乗りました。それが何月何日のことかは忘れましたが、受話器を置いて車に飛び乗ったのは、午前 11時50分でした。その時刻は今でもはっきり覚えています。私はそれほど興奮していたのです。広島さつきセンターは、広島県廿日市市にあります。そこか ら高速道路を使って2時間の道のり。私は、無我夢中で運転しました。
幸いにも、私はメダカの飼育現場を拝見することができました。相手の方は、メ ダカについて詳しく話してくださいました。ところがです。私には話の内容がさっぱりわからない。専門用語が次から次へと飛び出します。これを理解するに は、相当の経験と研究が必要なように思えたのでした。
<第3話 2002年6月>
メダカのみならず淡水魚の飼育は、梅雨の時が一番難しいと言われます。しかしながら、「広島さつきセンター」の「めだかの館」は、一定の温度と湿度を維持していますから、梅雨だからといって、飼育はさほど困難ではありません。
ただ、私がここまでたどり着くには、相当の苦労がありました。最初の頃は、メダカの専門家の話を聞いても内容がわかりませんでした。専門書を読んではみましたが、実感が湧きません。
そこで、私はまずいろいろなメダカを実際に飼育してみることにしました。その当時で金額にして、20万円ほどのメダカを購入しました。最初は自宅で飼育し ていましたが、年中メダカを繁殖させるには、一定の温度が必要です。そこで、物置として使っていたプレハブ小屋を改造し、メダカ小屋をつくることにしまし た。電気を配線し、クーラーと扇風機を取り付けました。また、冬越しのために、灯油の暖房機を設置しました。
メダカの飼育方法については、ある 人から詳しい話を聞くことができました。出会いは、全くの偶然でした。その人は、ある日のこと、店にひょっこり現れたのです。いろいろな話をするうちに、 その人のことがだんだんわかってきました。長年、グッピーをはじめあらゆる熱帯魚を飼育してきた人でした。ちょうどその頃は、メダカの飼育にこっていまし た。メダカについては、専門書をすべて読み切った人だったのです。メダカ小屋をつくるときにも、その人からいろいろとアドバイスを受けることができまし た。 今日の私があるのは、その人との出会いがあったからです。また、前号の「メダカの館 通信」にも書きましたが、他の飼育業者からもいろいろなことを 学びました。
話は変わるのですが、アルビノメダカという種類がいます。このメダカの繁殖には苦労しました。当時、アルビノは1匹5万円でした。 それを10匹仕入れました。合計で50万円の出費でした。そのアルビノが7匹死亡。残るは3匹。その3匹でアルビノを繁殖させたこともありました。
メダカの飼育を始めてみようという方がありましたら、最初はあまり高価なメダカは避けたほうがよいでしょう。お勧めはダルマメダカです。ダルマメダカは姿かたちがかわいらしく、泳ぎ方もユーモラスです。
ダルマメダカの中には、体長が少し長いものがいます。私はこれを「半ダルマ」と呼んでいます。この半ダルマが特にお勧めです。普通のダルマメダカに比べ、 環境の変化に強く、初心者でも楽に飼育ができます。また、繁殖は比較的容易ですので、メダカに興味をお持ちの方は、この「半ダルマ」から始めるとよいで しょう。
<第4話 2002年7月>
さて、前月号では、「半ダルマメダカ」の飼育をお勧めしました。半ダルマはダルマに比べ丈夫で、初心者にも簡単に飼えることをお話しました。
半 ダルマは繁殖も容易なのですが、半ダルマの子どもは、すべて半ダルマになると思う方もあるかもしれません。しかし、実際はそうではありません。半ダルマか らもダルマが産まれるのです。ただそれには、「コツ」がいります。 今回は、このコツについて話してみたいと思います。
受精卵は細胞分裂を繰り返し、やがてメダカの形になります。その過程を一般には、「発生」と言っています。コツというのは、その発生のときの温度管理にあるのです。
私 は、最初温度管理のことがわからず、交配をしていました。あるときには、半ダルマの親から、同じ半ダルマが生まれたり、またあるときは、ダルマが生まれた りしていました。この原因を探っていくうちに、発生のときの温度が関係していることがわかりました。発生のときの温度が低いと子どもは半ダルマになり、温 度が高いとダルマになることをつきとめました。
さらに詳しく温度を調べたところ、子どもがダルマになるか半ダルマになるかの境目は、27℃であることがわかりました。つまり、発生のときの温度を27℃以上に保つことができれば、生まれる稚魚はダルマになります。その確率は、約90%です。
こ のことがわかれば、半ダルマからダルマをつくり出すのは容易になります。初心者の方はダルマメダカのユーモラスな形や動きに魅力を感じられることでしょ う。そのためには、ダルマを最初から購入するのもよいのですが、丈夫で飼育しやすい半ダルマがよいでしょう。メダカを繁殖させるのもメダカを飼う楽しみの 一つですが、半ダルマからユーモラスなダルマを繁殖させることができるのです。このことも、私が半ダルマをお勧めする理由なのです。
先ほど述べま したように温度管理に気をつけて、半ダルマからダルマをつくり出してみてください。実際に繁殖させるには、半ダルマ10匹以上を飼いましょう。メダカの色 にこだわる必要はありません。どの色でも結構ですから、半ダルマからダルマをつくり出しましょう。いろいろな色のダルマメダカが生まれるはずです。生まれ たダルマメダカが成長したら色別に分け、生きたメダカのコレクションをつくるのも楽しいものです。
次号では、近年つくりだされた「ホタルメダカ」について、お話しましょう。
<第5話 2002年8月>
近 年発売されたメダカに、「ホタルメダカ」というものがあります。ホタルメダカは、別名「ヒカリメダカ」とも言いますが、同じものです。当メダカの館では、 「ホタルメダカ」と呼んでいますので、ここでは、ホタルメダカという名前を使うことにします。当店においては、最近になり、プラチナのごとく光り輝くホタ ルメダカができるようになりました。しかし、ここまでたどり着くには、相当の苦労がありました。その一端をお話したいと思います。
私は最初、メダカ生産業者から通信販売で、茶色と黄色のホタルメダカを購入しました。一匹の値段は、5000円程度だったと思います。
ホタルメダカの特徴は、なんと言っても背中が光ることです。熱帯魚の中にも体が光るものとして、ネオンテトラなどがいます。それほどの光りはありませんが、日光や蛍光灯を当てると、背中の中央がくっきりと光るのです。
光 るのは虹色細胞というものがあるためです。この虹色細胞は、普通目の縁や腹の部分にあるのですが、それが背中に回ったものです。そのため、背中が光るので す。また、ひれにも特徴があります。ホタルメダカは背びれがしりびれと同じ形をしているのです。しりびれが背びれに転移したものとも考えられます。また、 尾びれはひし形をしています。
普通のメダカとホタルメダカの違いを見極めるには、背中の光り具合だけでなく、背びれの形に注目するとよいでしょう。
さて、私は購入した茶色と黄色のホタルメダカをもとに交配に交配を重ねました。試行錯誤の末、青色のホタルメダカをつくり出すことに成功しました。しかし、白色のホタルメダカはどうしてもつくることができません。
あちらこちらのメダカの養殖業者のパンフレット等の資料を取り寄せたり、淡水魚の雑誌を丹念に調べてみましたが、どこにも白色のホタルメダカはいませんでした。
私 は考えました。なんとかして、白色のホタルメダカをつくり出すことができれば、重大ニュースになるだろうと。私は魅せられたように研究に没頭しました。茶 色や黄色のホタルメダカの中にも、白色になる遺伝子がきっとあるはずです。理論上は、つくれるはずなのです。しかし、どうやっても白色のホタルメダカをつ くり出すことはできませんでした。
しばらくして、私は白色のホタルメダカを発見することになるのです。それは、全くの偶然でした。そのことについては、次号でお話することにしましょう。
<第6話 2002年9月>
前月号では、ホタルメダカについて話してきました。今月号では、ホタルメダカの中でも白色のホタルメダカについてお話しましょう。
私は、茶色と黄色のホタルメダカからいろいろな色のホタルメダカをつくり出しました。しかし、とうとう白色はつくることはできませんでした。
白色のホタルメダカとの出会いは全くの偶然でした。私がメダカの先生と仰ぐ人が、普通の白メダカを200匹持って来たのです。そのメダカを水槽に入れ、二人で眺めていたときのことです。「おっ」と先生が言いました。私はその方向を見ました。「あっ」と短い私の声。
普 通の白メダカの中に、変わったメダカがいるのです。背骨がへの字のように曲がっており、奇形中の奇形と言ってもいいでしょう。しかし、背中は光っているの です。私たちは、そのメダカを小さい水槽に移し、じっくりと観察しました。背中が光っているだけではありません。背びれがしりびれと同じ形をしているので す。奇形ではあるものの、正真正銘のホタルメダカです。しかも、色は白。
同じような白色のホタルメダカはまだいないかと懸命に探しました。「いた」二人は叫びました。他にも2匹いたのです。それも別の水槽に入れ、横から眺めてみました。やはり、ホタルメダカです。200匹の白メダカの中に、3匹の白色のホタルメダカがいたのです。
先生は、3匹の白色のホタルメダカを車で3時間かけて、「メダカの研究所」に持って行きました。その研究所では、種々のメダカをつくり出し繁殖させ、研究していたのです。研究所で白色のホタルメダカを見てもらうことにしたのです。
先生がメダカを見せると、研究員はこう言ったそうです。「とうとう出ましたか」。やはり、このメダカは私が捜し求めていたものだったのです。研究所にも、白色のホタルメダカはいないようでした。
研究員は、続けてこう言いました。「一匹いただけませんか」。どうもこのメダカは、研究に値するもののようです。メダカを持って行った先生は、研究のためならと考え、一匹を研究所に差し上げました。
残るは、白色のホタルメダカ2匹。さて、どうしたものでしょう。私はとりあえず、このメダカを繁殖させることにしました。
<第7話 2002年10月>
200匹の白メダカの中から発見した3匹のホタルメダカ。1匹は、「メダカの研究所」に差し上げました。残るは2匹。この2匹のホタルメダカをどうしたものか…・・。前号では、ここまでお話しました。今月号は、その続きです。
残る2匹の白色のホタルメダカから、多量のホタルメダカをつくり出すことが私の課題になりました。しかし、2匹だけでは繁殖は望めません。
そこで、このメダカと茶色と黄色のホタルメダカをかけ合わせて、子どもをつくることにしました。一般に親からできた子どもをF1(エフワン)と呼びます。F1をつくり出すのは、ひやひやものでした。親の白色のホタルメダカが死んだのでは、元も子もありません。
毎 朝起きるとすぐに、メダカハウスにかけて行きます。「生きていた」。一安心です。しかし、卵はまだです。そう簡単に卵は産みません。夜、メダカハウスの電 気を消すとき、また、親メダカを見ます。「明日も生きていてくれよ」。心の中でそうつぶやきます。毎日がこのような連続でした。
何日か後、私には随分日数が経ったように感じられましたが、やっと卵を産みました。これでなんとかF1をつくることができました。しかし、F1は背中が光っているものの、鼻が下がり、背骨が曲がった、言わば奇形なのです。
次 にF1同士をかけあわせ、F2(エフツー)をつくり出すことに成功しました。F2の10匹のうち1匹の割合で、形のよい白色のホタルメダカが出現しまし た。そこで、F2を多量につくり、その中から形のよいものを選別し、再び交配を繰り返します。そうしてできたF3(エフスリー)は、一応完成品と呼べるも のでした。
やがて、白色の中でも、「ミルキー」という本物の純白種をつくり出すこともできるようになりました。ただ、できたミルキーは、 100%メスなのです。これでは、ミルキー同士の交配はできません。どうしても、ミルキーのオスが必要です。今のところ、ミルキーのオスはできていませ ん。いつの日にか、オスをつくり出すべく研究中です。
<第8話 2002年11月>
これまで、「ホタルメダカ」や「ダルマメダカ」について書いてきましたが、今回は、「ホタルダルマメダカ」について、お話しようと思います。
ホタルメダカは、背中が光っており、背びれに特徴があります。他方、ダルマメダカは、普通のメダカに比べ、体長が短く腹が出ているものです。「ホタルダルマメダカ」は、「ホタルメダカ」の特徴と「ダルマメダカ」の特徴を併せ持つものです。
私が、このホタルダルマメダカを最初に目にしたのは、実物ではなく、雑誌の写真でした。ある淡水魚の雑誌に、黄ホタルダルマメダカが紹介されていました。私は、このホタルダルマメダカをつくる誘惑に駆られました。
私 の考え方はこうでした。ホタルダルマですから、ホタルとダルマを交配すればいいことになります。ただ、それだけでは、ホタルダルマは出ないことはわかって います。交配してできたF1をかけ合わせ、F2をつくる必要があります。そうすれば、F2にはホタルダルマが出るはずです。それは、私の経験からも、ま た、メンデルの法則からも言えることです。
そこで、まず黄ホタルと黄ダルマを親として交配し、F1をつくることにしました。卵は比較的簡単にとることができました。私は、ドキドキ、ワクワクしながら、成長を待つことにしました。メダカは順調に成長しました。
成長したF1は、予想通りすべて普通の黄色のメダカでした。見た目には、一般に広く販売されているヒメダカと何ら変わりがありません。このままF1を売れば、1匹20円程度でしょう。いくらたくさんF1を生産しても、利益は上がらないばかりか、元も取れません。
ただ、F1は見た目には普通種でも、特別な遺伝子をもっています。ですから、F1同士をかけ合わせれば、F2では特別な種が出てくるはずです。
F1同士を交配し、F2をつくり出しました。するとどうでしょう。予想通りホタルダルマが出るではありませんか。
私 が実際にやってみたところ、1000匹のうち、ホタルダルマは10匹程度。約1割がホタル。約1割がダルマ。残りがF1と同じ形質をもつものでした。 1000匹程度の生産ですから、この割合は、確定したものとは言えないでしょう。しかし、F2の段階で、ホタルダルマメダカをつくり出せることがわかった のです。
<第9話 2002年12月>
メダカを飼育するには、水温の管理も大切ですが、害虫や病気への対応が必要になってきます。私は、初期には、プレハブ小屋を改造し、その中でメダカを飼育していました。その頃には、メダカの飼育環境に随分頭を痛めたものです。
プレハブ小屋には小さな窓が一つ。日光はあまり入りません。それを補うべく蛍光灯をたくさんつけ、温度を上げるために灯油のヒーターをたいていました。それでも、メダカは病気になったり、稚魚が水槽ごと全滅することがありました。
その中でも苦労したのが、ヒドラの発生でした。水槽に発生するヒドラの大きさは2ミリから3ミリ。これが大量に発生するのです。ヒドラが発生すると、一夜にして稚魚は全滅してしまいます。
稚魚の入っている水槽から、小さいヒドラだけを取り出すことは不可能です。水を入れ替えようにも、稚魚だけをすくうのは、至難の業です。
人に聞いた話では、ヒドラはホルマリンに弱いようです。しかし、ホルマリンを水槽に入れたのでは、ヒドラだけでなく、稚魚も死んでしまいます。私は考えた あげく、なるべくヒドラを水槽に入れないようにすることにしました。メダカの産卵にはシュロの葉を使っていましたが、このシュロの葉やメダカをすくう網を すべてホルマリンで洗い、乾かして使うよう心がけました。しかし、それでもヒドラの発生を完全に防ぐことはできませんでした。
ヒドラを 退治する薬がないわけではありません。私は以前にヒドラに効き目があるという薬を外国から輸入していました。しかし、その薬を使う気にはなりませんでし た。この薬は、コイに有害だと聞いていたからです。コイに有害ならば、メダカにも有害なはずです。ましてや、メダカの稚魚に使おうものなら結果は目に見え ています。
ただ、ヒドラに悩まされていた私は、困り果てていました。薬は輸入したものの、使おうか使うまいか迷い、とうとう一年半も使 わず放置していました。私は決断しました。「思い切って使ってみよう」。一つの水槽だけに使えば、稚魚の被害も最小限ですみます。輸入していた薬をほんの 一滴、一つの水槽に落として様子をみることにしました。
翌朝、薬を入れた水槽を恐る恐る見ました。するとどうでしょう。ヒドラは全滅し、水槽に浮いているではありませんか。稚魚はというと、元気に水槽の中を泳ぎ回っています。
こうして、ヒドラとの闘いには勝利したものの、敵は次々と現れるのでした。
<第10話 2003年1月>
前月号では、ヒドラとの格闘の話をしました。ヒドラは、水温が高く、日当たりのよい水槽にはあまり発生しないようです。このことは、日光の重要性を私たち に教えてくれます。日光は、水温を上げるだけではありません。日光に含まれる紫外線が重要な役割を果たしてくれるようです。
紫外線というと、人体に悪影響を及ぼすもののように考えがちですが、同時に殺菌作用もあるのです。メダカに有害な雑菌も日光の紫外線で死滅することもあるのです。ですから、丈夫なメダカを育てるには、十分な日光に当てることが大切と言えます。
また、メダカに限らず、どの水棲生物にも言えることなのですが、水温が17℃前後のときが一番危険なようです。季節で言うと、春の4?5月。秋の9?10 月が飼育には一番難しい時期です。病気も発生しやすく、メダカも水カビ病や白点病にかかったりします。ですから、この時期には、ある程度メダカが死ぬのを 覚悟しなければなりません。
ただ、この時期、病気を防ぐために、適量の薬を入れておくのもよい方法です。薬として有名なものに、「メチレンブルー」や「マラカイトグリーン」などがあります。これらの薬はペットショップにも売られていますので、簡単に入手することができます。
それでも病気になるようでしたら、ヒーターで水温を30℃に上げ、薬を使うとよいでしょう。水温が上がり、雑菌の力も弱まり、薬の効き目がよくなります。
水温や水質の管理に十分心がけ、飼育に難しい時期を乗り切りましょう。
<第11話 2003年8月>
本年2003年に新発売いたしました「ピュアブラックメダカ」についてお話したいと思います。このメダカを作るに至った経緯はこのようでした。
3年前のことでした。一匹の真っ黒いメダカを発見。普通の茶メダカではありません。普通の茶メダカは保護色の機能をもつため、入れた容器の色により体色が変化します。
しかし、発見したメダカは、真っ黒なのです。白い容器に入れても、体色が変化しないのです。その他にも特徴がありました。頭が小さく、目が点のように小さいのです。体も他のメダカに比べて長いようでした。私は、このメダカを「黒べえ」と名づけました。
私は、この「黒べえ」に非常に魅力を感じました。そこで、このメダカを交配し、繁殖させ、固定化したいと思いました。ただ、私より先にメダカを飼育してきた先輩達は、無関心でした。一言こう先輩に言われました。「このメダカは奇形だから、止めておいた方がいい」
そう言われれば、意地になるのが私の性分。
どのメダカにでもいいから、この「黒べえ」の遺伝子を残したいと思いました。他のメダカと交配したところ、ほんのわずかですが卵がとれました。その数、2、3個だったように記憶しています。
卵は孵化しましたが、稚魚はなかなか体が大きくなりませんでした。アルビノメダカの稚魚もなかなか大きくなりませんが、それと同じです。
それでも、続けて他のメダカ2、3匹と交配し卵をとりましたが、やがて、その「黒べえ」は死んでしまいました。
やっと何匹が産まれたF1。大切に大切に育てました。
1年後、F1同士を交配し、F2をつくることに成功しました。F2をじっと観察していると、真っ黒なメダカを1、2匹発見。あの「黒べえ」です。F2で 真っ黒なメダカが出てくることは理論上はわかっていましたが、実際にそのメダカを目にした私は、思わず、「やったー!」と心の中で叫びました。
また、そのF2を大切に育てました。そして、ありとあらゆるメダカと交配しました。なんとか、この「黒べえ」の遺伝子を他のメダカに移し、残すためです。 交配したメダカは、茶色の普通種、ダルマ、ホタル、アルビノホタル、アルビノダルマなどなど。あらゆるメダカと交配を重ねること2年。試行錯誤の連続でし た。
その結果、やっと普通種の形をした「黒べえ」が固定化しつつあります。
この「黒べえ」を発売するにあたり、もっと良い名 前はないものかと思案しておりました。このメダカは、体型にも特徴があるのですが、何と言っても、最大の特徴は、その黒さにあります。保護色の機能をもた ず、全くの純粋な黒色です。そんなことを友人と話していたときのことです。「純=ピュア、黒=ブラックだから、ピュアブラックはどうだろう」ということに なりました。
そのときから、このメダカは、「黒べえ」改め、正式に「ピュアブラックメダカ」という名前になりました。
現在、 普通種のピュアブラックメダカは販売しております。このピュアブラックメダカ同士を交配しますと、素晴らしいメダカが産まれます。産まれるメダカは、普通 種(フルカラー)、ホタル(フルカラー)、ダルマ、ホタルダルマ、スーパーホタル、目点スーパーメダカなどです。また、100匹中、4、5匹の割合で、 ピュアブラックメダカが産まれます。
なお、ピュアブラックメダカのダルマ、ホタル、ホタルダルマは、2004年発売予定です。ピュアブラックダルマメダカをご覧になりたい方は、当店のホームページの「メダカ王国(ビデオ画像)」をクリックしてください。動画が入っています。
<第12話 2003年9月>
前号で述べました経緯により、「ピュアブラックメダカ」作りは軌道に乗ってきました。
私の今現在の思いは、新たなるメダカの新種作りへと発展しています。
昨年秋より、約70種類のメダカを交配してきました。今は、それらから作り出したF2の中で、新種探しに没頭しております。毎日が交配、選別の連続であ り、その中に、喜びや感動を見出しております。できることなら、毎日、一日中、メダカハウスの中にこもり、新種作りのための研究をしたいくらいです。
私が今取り組んでいる新種は、黄金、シルバー、赤色、ピュアブルーなどの体色をしたメダカです。また、尾びれに特徴のあるメダカを作りたいとも思っています。
例えば、金魚のような三尾をもつものや、グッピーのような長く大きなひれをもつものです。
さらに、強い光を放つ全身プラチナのようなメダカや全身にラメが入ったようなメダカを作り出したいと思っています。
お客様の中には、2色メダカをご覧になった方もあることでしょう。私も、黄黒、青黒の2色メダカを実際に見たことがあります。ただ、これらのメダカは保護色のため、入れる容器によって、色が薄くなってしまいます。これでは、本物とは言えません。
私が目指すのは、保護色の機能をもたない2色メダカです。それも、紅白の2色メダカに挑戦したいと思っています。色の組み合わせから言えば、紅白に勝るものはいないでしょう。
さらに、将来は、2色にとどまらず、3色メダカも作ってみたいと考えています。
今まで私が作り出した新種の中で、今年の夏、ほぼ固定化しているメダカとしては、次のようなものがあります。
「うす黄金ホタルメダカ」「目点パールスーパーホタルメダカ」「目点シルバーメダカ」などです。
もちろん、固定化しつつあるものには、「ピュアブラックメダカ」も含まれています。
今年の秋までに、どれだけの新種ができるか楽しみにしておいてください。
また、皆様の中で新種のメダカや変ったメダカを発見された方がありましたら、「めだかの館」まで、ご一報ください。是非、見せていただきたいと存じます。
<第13話 2003年10月>
メダカがブームになってから、何年になるでしょうか。このブームは、単なるブームで終わるのでしょうか。いや、そんなことはありません。
新種メダカが登場し続ける限り、メダカブームは、ますます熱を帯びてくるものと思われます。
日本では、鯉や金魚が長年にわたり改良に改良を重ねられ、愛好家を楽しませています。おそらく、メダカもそのようになり、愛好家が定着することでしょう。また、私は、それが現実になるよう努力を続けるつもりでおります。
将来的には、様々な人々がメダカの改良を行い、そのメダカを発表する場として、「メダカの品評会」を開催したいとも考えております。
また、余談になりますが、メダカにかわいい名前を付けたいとも思っています。皆様の中で、かわいい名前を思いつかれた方がありましたら、お知らせ下さい。「めだかの館」では、メダカの愛称を募集しております。
<第14話 2003年11月>
今回は、「アルビノホタルダルマメダカ」について書いてみようと思います。私が、最初にその名前を知ったのは、2001年のこと。あるパンフレットでした。
パンフレットには、こう書かれていました。
「メダカの最高峰 アルビノホタルダルマメダカ」その値段を見て、ビックリ。1匹が14万8千円。残念ながら、写真はのっていませんでした。さて、それからです。私のアルビノホタルダルマメダカへの挑戦が始まったのは。
当時、アルビノの普通種も高価でした。これは、「第三話」にも書いたことなのですが、アルビノの普通種は、1匹が5万円。それを10匹仕入れました。合計で50万円の出費でした。
しかしながら、そのアルビノが7匹死亡。残るは、3匹。その3匹を使って、アルビノホタルダルマメダカに挑戦となったわけです。
考え方は、こうでした。まず、アルビノとホタルを交配し、アルビノホタルをつくります。同時に、アルビノとダルマを交配し、アルビノダルマをつくる。このようにしてできた、アルビノホタルとアルビノダルマを交配すれば、アルビノホタルダルマができるはずです。
そこでまず、アルビノとホタルを交配しました。アルビノは、卵を浮き草やシュロに産みつける習性はありません。卵をそのまま、産み落とすのです。それも一 個ずつ産み落とすのです。普通のメダカでは、いくつかの卵がかたまっているのですが、アルビノには、そういうことがないのです。
それに、卵を産む時間帯が一定していません。普通、メダカは早朝に卵を産むことが多いのですが、アルビノはいつ産むのかわからないのです。
したがって、水槽の中をいつもきれいにし、常時観察し、いつ産まれても卵が発見できるようにしておかなければなりませんでした。
アルビノとホタルを交配してできたF1は、ごく普通の茶メダカのような格好をしています。目も赤くありません。しかし、ここであきらめてはいけません。F1で、目指すアルビノホタルが出なくても、F2では、出てくるはずです。
F1同士を交配したところ、確かにアルビノが出ました。しかしです。アルビノホタルが出る確率は百分の一程度です。後は、アルビノの普通種が出ます。F2 はできたものの、これが非常に弱いのです。稚魚のうちに多くが死んでしまいます。生き残ったものも成長が非常に遅いのです。
アルビノとダルマの交配も同様でした。幾多の困難を乗り越え、やっとアルビノダルマをつくることに成功しました。
さらに、アルビノホタルとアルビノダルマを交配し、同様にして、アルビノホタルダルマを完成させました。
当時は、早くアルビノホタルダルマをつくりたい一心でしたので、冬にはヒーターで水温を上げ、蛍光灯も24時間つけっぱなしの状態でした。
私が、アルビノホタルダルマメダカ作りに夢中だったころ、2001年当時でしたが、「めだかの館」には、多くのマスメディアが取材に来ました。地元テレビ局も、ほとんどが取材に来ました。
当時は、メダカが絶滅危惧種に指定されたこともあり、また、変りメダカとして改良メダカに注目が集まりつつあるころでした。
私は、もともとは、さつき屋で、さつきを始めて25年になります。その間、さつきに関しては、マスメディアの取材など受けたこともありませんでしたが、メダカを始めてわずかの間に、多くの取材を受けたものです。
<第15話 2003年12月>
やっと作り出したアルビノホタルダルマメダカ。値段は、1匹数万円にしたと思います。数万円でも、私のそれまでの苦労に比べれば安いくらいのものです。しかし、当時は、1匹数万円のメダカが売れるはずもなく、店の「看板」として、陳列しておりました。
ところが、忘れもしません。2001年8月13日、午後4時ころのことです。ある来店者が、「アルビノホタルダルマを5ペアください」とおっしゃる。
最初、私は、そのお客様が桁を一つ間違えているのではないかと思ったのです。1匹数千円ならば、計10匹で数万円ですから、買えない値段ではありません。
しかし、お客様に値段を確かめるのも失礼です。私は、緊張しながら、5ペアを水槽からすくいあげました。
恐る恐る、お客様に、本当の金額を言いました。
ところが、お客様は、驚きもせず、財布から1万円札を次々出されるのです。札は、すべて新札でした。私は、正直言って、ビビりました。
後でわかったことなのですが、そのお客様は、当店のアルビノホタルダルマメダカを見るのは初めてではありませんでした。当店が、いつも出店をしている催し 物会場で、すでに目にされていたのです。ですから、買う気になって、当店までこられていたのです。当然、財布の中に、かなりの額のお金が、用意されていた ことでしょう。
そのお客様は、メダカ専用の水槽を特注でつくらせているとのことでした。長さ1メートルの水槽です。1メートルと言えば、かなりの大きさです。その水槽に、メダカ10匹では少ないことでしょう。もっとアルビノホタルダルマメダカを買われるかもしれません。
案の定、4日後の8月17日、また、ご来店。アルビノホタルダルマメダカを、もう5ペア買われて行かれました。
話は少しかわるのですが、当時のアルビノは、弱かったのですが、本当に透明でした。透明度が高く、血管の色で、薄いピンクに見えたものです。弱いだけに、高値で取引されるのも当たり前でした。
しかし、最近のアルビノは強くはなりましたが、黄色がかった色になってしまいました。黄色がかったアルビノは強く、繁殖力は旺盛です。そのため、メダカの知識があまりなくても、繁殖が容易になりました。
他店で安売りされているアルビノを見ることもありますが、ただ目が赤いだけで、黄色がかったものが多いようです。これでは、本物のアルビノとは言えません。
当店のアルビノは少し高価ですが、美しい透明感を持ち、泳ぐ姿も華麗です。
今でも、本当に、透明なアルビノをつくるのは至難の業であり、高値で取引されるのも当然と言えましょう。
<第16話 2004年8月>
ピュアホワイトダルマメダカ♀ メダカの交配を始めた頃は、親メダカのシルキー(うす黄メダカ)、ミルキー(♀白、♂うす黄)10匹を購入。ミルキーの名前を知ったのはこのときです。
2?3年後、色がどう違うかわからずにメダカクリスタルホワイトに出会い、50匹購入。数ヶ月たっても卵が一切産まれない。全メダカを調べてみると、全部 メス。ショックでした。そこでクリスタルホワイトは当店から消え、私の先輩が約10年、ミルキーのオス・メスの純白を目指し交配を続けていましたが、純白 のオスメダカは固定できないとのことでした。
私はその頃、白ホタルメダカを発見(メダカの館通信 第6号7号に掲載)。奇形でシルキーメダカです。色は問題ではありません。白ホタルメダカで良い形をしたメダカにするため、交配を繰り返しました。
2年前、平成14年その数千匹のホタルメダカの中に約1センチほどのオスメダカらしきものを発見。大切な1匹です。死なせることのないよう大事に大事に育てました。そのメダカが大きくなっても純白であること、オスであることを願いながら。
やがて、そのメダカがメスをおいかけるようになりました。相手探しです。メスの純白はたくさんいます。相手はミルキーの半ダルマにしました。ホタル♂×半ダルマ♀から生まれるメダカは、普通種、ダルマ、ホタル、ホタルダルマの予定です。
1対1交配は、毎日が勝負です。卵一個残らず、根気よく卵を別水槽に移します。はじめの頃は、無精卵が多いようでした。やがて、有精卵が産まれ始め、初めに産まれた無精卵のカビが移らないよう、有精卵は薬につけ、殺菌してから水槽に入れます。
約10回取れば成功です。後は、2、3ヶ月待ち、F1の子供が孫メダカを産んでくれるのをひたすら待ちました。
できました。99%純白です。数百匹の中でピンクが1匹で、ダルマ、半ダルマ、ホタル。その中には数匹のホタルダルマ。あまりの白さにびっくり。一人ニヤニヤしたものです。
たった1匹のオスを発見したことにより、白メダカ全種類の純白化に成功しました。
現在、青メダカで同じことをしています。みなさん、青メダカのオスを見たことがありますか?オスはすべてグレーです。青メダカは95%できましたが、まだ、オスがグレー色です。スカイブルーは(オスにおいてもブルー)平成17年にできると思います。
メダカはすべて保護色を持っています。入れる器に体色をあわせ、天敵より身を守っています。白メダカは白色の色素しか持っていません。シルキーは、オス、 メスとも黄色の色素を持っています。ミルキーのオスは、数パーセントのメダカにおいて黄色の色素も持っています(婚姻色が尾びれで黄色に変色します)。
今までの数万匹のピュアホワイトの全種類のオスのほとんどに婚姻色が見られません。器によってはピンクに見えます。これは血管が浮きでて見えるためです。ピュアホワイトの色を確かめるには、黒か青の器で見てください。よく白さがわかります。
皆さん、白メダカの、普通種以外のホタル、ダルマ、ホタルダルマのオスを見てください。ほとんど純白はいません。
当店のピュアホワイトは白系全種純白です。数万匹のピュアホワイトを生産しましたが、固定率99%です。(純白度)
一つ問題は、当店から出荷した時、ピュアホワイトの名前をつけていますが、業者の間で生産され、ミルキーの名前で販売されているものがあります。当店のピュアホワイトを購入し、またその店でミルキーを買うと、同じメダカということが起こるかもしれません。
私は学者ではありません。白メダカの中の白色の色素が何%で黄色の色素が何%かはわかりません。
ピュア(純)という名前も、ピュアという響きがかわいいので、メダカの名前にいいと思いついたものです。
現在、白メダカにおいて、普通種、ダルマ、ホタル、ホタルダルマのオス全部、純白というメダカはほかにないと思っています。
ピュアホワイトは、白メダカ全種で純白です。固定率99%です。ぜひ他の白メダカと比べてみてください。
ピュアホワイトについて、さらに詳しく知りたい方は、当店までお電話ください。直接ご説明したいと存じます。
<第17話 2005年5月>
朝晩の気温差が大きいこの頃ですが、皆さんお変わりありませんか。
このところ忙しくしており、「めだかの館 通信」が途絶えております。すみません。ようやく少しだけ書く時間ができました。
最近、さつきの方は人に任せっきりで、メダカの世話ばかりしています。朝3時過ぎには起床します。起きるとすぐに、メダカハウスに直行。この時間、メダカも熟睡中かもしれません(笑)。寝不足のメダカを前にして、選別に夢中になっています。
今回は、特に「セルフィンメダカ」に絞って書いてみようと思います。セルフィンメダカの特徴は既にご存知でしょう。背びれが2枚に変化しており、1枚はヨットの帆のように立っています。熱帯魚などでは、よく見られるものです。
あるときのことです。先輩より6匹のセルフィン(兄弟メダカ)を預かりました。私もセルフィンを2匹もっていました。それらのセルフィンをもとに、交配を始めることにしました。現在、F2→F3の段階です。
交配は、♂1対♀1です。これを全部で15水槽つくりました。いくつかの水槽では失敗しましたが、成果が上がっている水槽もあります。少し紹介しておきます。
水槽?・15。2004年に、セルフィン×ピュアホワイトホタルの1対1交配。交配・選別を繰り返し、F3まできました。F3では、20匹すべてが全部セルフィンとなりました。大感激です。20匹の中から、ベストなものを4匹選び出し、1対1交配を2水槽作りました。
水槽?・13では、2004年、シルバーホタルダルマ×セルフィンの1対1交配。交配・選別を行い、5対7で水槽セー13?3を作りました。その中から、チョキメダカを発見。現在、1対1で交配を開始しています。これは楽しみです。
水槽?・14。2004年、シルバーメダカ×セルフィンの1対1交配。F2で、スモールアイが17匹、ピュアブラックが3匹産まれました。この計29匹で、水槽?・セ?14?3を作り、親メダカとしました。
水槽?・9は、セルフィン×ピュアブラックです。2004年交配。現在、ピュアブラックセルフィンが2匹できています。
?・14、?・9の水槽で、F1においてピュアブラックが出現しています。つまり、これらのセルフィンは、ピュアブラックの遺伝子を持っているということです。今までの経験をもとに、全種類のセルフィンを作りたいと考えています。
さて、話は変わるのですが、メダカのネーミングについてです。例えば、ピュアブラックセルフィンホタルダルマメダカがいます。当園の記号で言いますと、 PB・SF・HDとなります。どうもアルファベット記号で表すと感じが出ません。また、日本メダカの名前に長いカタカナの名前をつけるのもどうかと思って います。セルフィンという名前も私としては、好きではありません。「めだかの館」のホームページをご覧の皆さん、何かいいアイデアはありませんか?
ただし、セルフィンを「角(つの)メダカ」と呼ぶのはやめてくださいね。というのは、ある通販サイトで、先輩より預かり、私が交配し作出したセルフィンを 「角(つの)メダカ」という名前で売り出しているのです。先輩にも申し訳ありません。この名前を聞くと、私に角がはえてきそうです。
何かいい名前が浮かびましたら、「めだかの館」まで投稿してください。投稿採用の方には、セルフィン系メダカをプレゼントしたいと思っています。
ところで、「めだかの館」の会員の方で、尻ビレにセルフィンが出た方がいらっしゃいましたが、どうなりましたか? 当園のセルフィンと交配すると、上下のヒレがセルフィンのメダカができるかもしれません。
上下のヒレがセルフィン、体色が琥珀、体形がホタルダルマのメダカができたらすごいですね。想像するだけで、ワクワクします。
<第18話 2005年6月>
楊貴妃 赤メダカへの挑戦!鯉・金魚の赤に近づけたい
2003年夏、7月のことです。黄金系メダカを黒色の入れ物で飼っていました。その中に、変わったメダカがいました。変わった色です。しばらく成長するのを待ちました。9月に本格的にチェック。
やはり、変わった色です。黒茶?黄茶?何色と表現すればいいでしょう。今までに見たことのない色。変わったメダカを見つけると、交配したくなるのが私です。遺伝すれば面白いことになりそうです。
このメダカを元に、交配をはじめました。何度も交配を繰り返し、あるメダカができました。そのメダカについては、次の通信で書きますが、その後できたのが、「楊貴妃」の「親メダカ」です。
「親メダカ」は緋色が強く、とても目立っていました。交配をする前から、作出するメダカのニックネームが思い浮かんでいました。名前は、神秘的な赤の美しさから、世界三大美女の一人、「楊貴妃」としました。
話 は以前に戻るのですが、5年前、私は「赤メダカ」づくりに挑戦していました。赤っぽい色のメダカを選別し、交配を繰り返しました。しかし、F4において色 が薄れ、ピンクメダカになってしまいました。F4まで努力したのに、だめだったのです。私は嫌になり、「赤メダカ」をあきらめました。
今回は、それ以来の赤への挑戦となったのです。先ほど述べた「親メダカ」を1対1で交配し、F1を6匹つくりました。すぐに、「親メダカ」を「めだか研究会」のSさんに預かっていただき、F1を作ってもらいました。
私 は自分で作ったF1で交配を繰り返しました。Sさんには、SさんのF1での交配をお願いしました。その結果、Sさんの水槽からは、スモールアイが3匹産ま れました。私の水槽からは、ダルマ、ホタル、ホタルダルマが産まれました。これで、「楊貴妃」の全種類ができたことになります。
しかし、この赤に満足することなく、今もより鮮やかな赤を目指して努力しています。最終的には、鯉や金魚に見られるような赤を作りたいと思っています。
現在、「楊貴妃」の水槽は13あります。13の水槽に記号をつけ、交配をしています。何メダカを交配中でしょうかネ! これは、今の所、秘密にしておきます。また、新たな発見がありましたら、報告します。
楊貴妃の特徴はこうです。小さいときは黄色ですが、Mサイズを越した頃から、婚姻色が緋色に変わっていきます。3代目の親でも色落ちがありません。固定率99%。色むらもありません。
「めだかやドットコム」の青木様に、「楊貴妃」の普通種、ホタル、ダルマ、ホタルダルマ、スモールアイをお送りしました。現在、写真撮影・新種審査をお願い中です。
<第19話 2005年7月>
ツトム君にはビックリ!
昨年8月頃、ご来店。親子三人。20代の男性(ツトム君)とご両親。
それ以来、月に一度ぐらいの割で来店され、何種類かのメダカを買っていただきました。私がZメダカを発売すると、すぐに4匹お買い上げ。
今年7月3日、育てたメダカを見てほしいと来店。16匹のメダカでした。小錦半ダルマ、スモールアイダルマ、スモールアイ、ピュアブラック、スーパーピュアブラック、小次郎でした。
どうやって作ったのでしょう。Zメダカ4匹から約100匹産まれ、そのうちの16匹だそうです。
続く7月17日に持ってきたのが18匹。私もビックリ!。約100匹中34匹がピュアブラック系でした。
「純黒はいますか?」とツトム君。「スーパーピュアブラックもいますよ」と私。
ツトム君は純黒を確認すると、満足したとのことで、全部「めだかの館」に進呈してくれました。
私のお返しは、未来のメダカ。琥珀スモールアイ×琥珀スモールアイのF1の約15匹の水槽を私と半分にしました。
ツトム君の話では、はじめの頃に買った琥珀から4匹のスモールアイが産まれているとのことです。
どうなっているのツトム君!。当店での新種メダカ作り一番乗りはツトム君かな?
彼から、ピュアホワイト、琥珀、その他たくさんのメダカをいただきました。
<第20話 2005年8月>
8月も下旬に入りました。朝夕は、めっきり涼しくなりました。皆様はお元気のことと拝察いたします。
さて、<メダカの館 通信 第17号>で、セルフィンのニックネームを募集しました。私は、以前、セルフィンを正宗と呼んでいました。日本の名刀、正宗です。
その後、数人の方より、伊達政宗のヨロイとカブトに三日月か刀のような飾りがあり、それがセルフィンのヒレに似ているとのご意見をいただきました。
なるほどと思った私は、セルフィンのニックネームを正宗改め政宗にすることにしました。
貴重なご意見をいただいた広島のNさん、埼玉のFさんには、政宗を送らせていただきました。ありがとうございました。
これからも、メダカのニックネームでよいものがありましたらお知らせください。首を長くして待っております。
私は、「広島さつきセンター」を経営している大場幸雄と言います。年齢は、47才。妻と5人の子供がいます。
さつきを始めて、25年。正月の2日間を除く、毎日店を開け、営業をしています。900坪の園内には、約1万本のさつきがあります。 また、ところどころにテーブルセットを置き、お客様にゆっくりとした時間を過ごしていただけるよう環境整備に努めています。
最 近は、さつきそっちのけで、こっているものがあります。それがメダカです。メダカと出会うきっかけはこうでした。ある日、知人からダルマメダカが送られて きました。最初は、メダカには全く興味がなく、店の片隅に置いておきました。ところがどうでしょう。そのメダカを売ってくれというお客様が現れました。私 は、言われるがまま販売をしました。その後も、ダルマメダカを売ってほしいというお客様が後を絶ちません。当時は、ダルマメダカを1匹2500円で販売し ていました。ところが、この値段で、どんどん売れるのです。そこで思いつきました。メダカがこんなにも高価に取り引きされるのであれば、自分でメダカを生 産してみようと。卸業者から、ダルマメダカを仕入れ、交配してみました。するとどうでしょう。メダカはどんどん卵を産み、稚魚があっという間に殖えまし た。
しかし、事はそううまくいくはずはありません。せっかく生まれた稚魚は、1ヶ月後に全滅。一夜にして、全部の稚魚が死んだのです。私 は、途方にくれました。そして思いました。ダルマメダカが1匹2500円で取り引きされるのも当たり前です。素人では、そう簡単に殖やせないのです。それ からです。私は一生懸命メダカについて勉強し、研究してきました。この間の経緯については、また次号の「メダカの館 通信」で書くことにしましょう。
そのことはさておき、今や年中メダカの生産ができるように体制を整えました。約60個の水槽には、30種類のメダカ、数万匹が泳いでいます。
朝5時には、起床し、メダカハウスに直行します。さつきは、そっちのけになってしまいました。夜9時まで1日の大半をメダカハウスで過ごします。目下の目標は、新種のメダカをつくりだすことです。わくわくドキドキの毎日を過ごしています。
お近くの方は、一度広島さつきセンターにお立ち寄りください。メダカ談議に花を咲かせましょう。
<第2話 2002年5月>
さて、前回の「メダカの館 通信」では、私がメダカの生産販売を始めるきっかけや当店の現状についてお話しました。今回は、私自身の苦労話に少しだけ付き合っていただければと思います。
最初に仕入れたダルマメダカは順調に卵を産み、稚魚が育つまでにいたりました。しかし、1ヶ月後、稚魚は全滅してしまいました。その原因はなかなかわかりませんでした。後になって、水槽に入れている水草が原因であることが判明しました。
当 初はダルマメダカの産卵に水草を使っていました。ダルマメダカの水槽に水草を入れておき、メダカが産み付けた水草を別の水槽に移して孵化させる方法をとっ ていました。水草は光合成をしますから、当然、副産物である酸素を出します。ただし、問題は夜です。水草は日光の当たらない夜は光合成をしません。した がって、酸素を出しません。そればかりか、水草は呼吸をします。呼吸とは、酸素を取り入れ、二酸化炭素を出すことです。
夜間、水草は酸素を出さないばかりか、逆に水中の酸素を奪っていたのです。そのため稚魚は酸欠となり、一夜にして全滅してしまったのです。
その後、私はあちこちのメダカ販売店を見て歩くことにしました。店員にメダカの飼育方法について、あれこれ聞いて歩く毎日が続きました。しかし、肝心なことは企業秘密でなかなか教えてはくれません。
ある日、メダカを生産している方に、電話であれこれ聞いていたときのことです。私は、実際に飼育現場を見たくなりました。その旨電話で話すと、相手の方は、あっさりと、「いいですよ」とおっしゃってくださいました。
私 は受話器を置くと、店の仕事は従業員にすべて任せ、車に飛び乗りました。それが何月何日のことかは忘れましたが、受話器を置いて車に飛び乗ったのは、午前 11時50分でした。その時刻は今でもはっきり覚えています。私はそれほど興奮していたのです。広島さつきセンターは、広島県廿日市市にあります。そこか ら高速道路を使って2時間の道のり。私は、無我夢中で運転しました。
幸いにも、私はメダカの飼育現場を拝見することができました。相手の方は、メ ダカについて詳しく話してくださいました。ところがです。私には話の内容がさっぱりわからない。専門用語が次から次へと飛び出します。これを理解するに は、相当の経験と研究が必要なように思えたのでした。
<第3話 2002年6月>
メダカのみならず淡水魚の飼育は、梅雨の時が一番難しいと言われます。しかしながら、「広島さつきセンター」の「めだかの館」は、一定の温度と湿度を維持していますから、梅雨だからといって、飼育はさほど困難ではありません。
ただ、私がここまでたどり着くには、相当の苦労がありました。最初の頃は、メダカの専門家の話を聞いても内容がわかりませんでした。専門書を読んではみましたが、実感が湧きません。
そこで、私はまずいろいろなメダカを実際に飼育してみることにしました。その当時で金額にして、20万円ほどのメダカを購入しました。最初は自宅で飼育し ていましたが、年中メダカを繁殖させるには、一定の温度が必要です。そこで、物置として使っていたプレハブ小屋を改造し、メダカ小屋をつくることにしまし た。電気を配線し、クーラーと扇風機を取り付けました。また、冬越しのために、灯油の暖房機を設置しました。
メダカの飼育方法については、ある 人から詳しい話を聞くことができました。出会いは、全くの偶然でした。その人は、ある日のこと、店にひょっこり現れたのです。いろいろな話をするうちに、 その人のことがだんだんわかってきました。長年、グッピーをはじめあらゆる熱帯魚を飼育してきた人でした。ちょうどその頃は、メダカの飼育にこっていまし た。メダカについては、専門書をすべて読み切った人だったのです。メダカ小屋をつくるときにも、その人からいろいろとアドバイスを受けることができまし た。 今日の私があるのは、その人との出会いがあったからです。また、前号の「メダカの館 通信」にも書きましたが、他の飼育業者からもいろいろなことを 学びました。
話は変わるのですが、アルビノメダカという種類がいます。このメダカの繁殖には苦労しました。当時、アルビノは1匹5万円でした。 それを10匹仕入れました。合計で50万円の出費でした。そのアルビノが7匹死亡。残るは3匹。その3匹でアルビノを繁殖させたこともありました。
メダカの飼育を始めてみようという方がありましたら、最初はあまり高価なメダカは避けたほうがよいでしょう。お勧めはダルマメダカです。ダルマメダカは姿かたちがかわいらしく、泳ぎ方もユーモラスです。
ダルマメダカの中には、体長が少し長いものがいます。私はこれを「半ダルマ」と呼んでいます。この半ダルマが特にお勧めです。普通のダルマメダカに比べ、 環境の変化に強く、初心者でも楽に飼育ができます。また、繁殖は比較的容易ですので、メダカに興味をお持ちの方は、この「半ダルマ」から始めるとよいで しょう。
<第4話 2002年7月>
さて、前月号では、「半ダルマメダカ」の飼育をお勧めしました。半ダルマはダルマに比べ丈夫で、初心者にも簡単に飼えることをお話しました。
半 ダルマは繁殖も容易なのですが、半ダルマの子どもは、すべて半ダルマになると思う方もあるかもしれません。しかし、実際はそうではありません。半ダルマか らもダルマが産まれるのです。ただそれには、「コツ」がいります。 今回は、このコツについて話してみたいと思います。
受精卵は細胞分裂を繰り返し、やがてメダカの形になります。その過程を一般には、「発生」と言っています。コツというのは、その発生のときの温度管理にあるのです。
私 は、最初温度管理のことがわからず、交配をしていました。あるときには、半ダルマの親から、同じ半ダルマが生まれたり、またあるときは、ダルマが生まれた りしていました。この原因を探っていくうちに、発生のときの温度が関係していることがわかりました。発生のときの温度が低いと子どもは半ダルマになり、温 度が高いとダルマになることをつきとめました。
さらに詳しく温度を調べたところ、子どもがダルマになるか半ダルマになるかの境目は、27℃であることがわかりました。つまり、発生のときの温度を27℃以上に保つことができれば、生まれる稚魚はダルマになります。その確率は、約90%です。
こ のことがわかれば、半ダルマからダルマをつくり出すのは容易になります。初心者の方はダルマメダカのユーモラスな形や動きに魅力を感じられることでしょ う。そのためには、ダルマを最初から購入するのもよいのですが、丈夫で飼育しやすい半ダルマがよいでしょう。メダカを繁殖させるのもメダカを飼う楽しみの 一つですが、半ダルマからユーモラスなダルマを繁殖させることができるのです。このことも、私が半ダルマをお勧めする理由なのです。
先ほど述べま したように温度管理に気をつけて、半ダルマからダルマをつくり出してみてください。実際に繁殖させるには、半ダルマ10匹以上を飼いましょう。メダカの色 にこだわる必要はありません。どの色でも結構ですから、半ダルマからダルマをつくり出しましょう。いろいろな色のダルマメダカが生まれるはずです。生まれ たダルマメダカが成長したら色別に分け、生きたメダカのコレクションをつくるのも楽しいものです。
次号では、近年つくりだされた「ホタルメダカ」について、お話しましょう。
<第5話 2002年8月>
近 年発売されたメダカに、「ホタルメダカ」というものがあります。ホタルメダカは、別名「ヒカリメダカ」とも言いますが、同じものです。当メダカの館では、 「ホタルメダカ」と呼んでいますので、ここでは、ホタルメダカという名前を使うことにします。当店においては、最近になり、プラチナのごとく光り輝くホタ ルメダカができるようになりました。しかし、ここまでたどり着くには、相当の苦労がありました。その一端をお話したいと思います。
私は最初、メダカ生産業者から通信販売で、茶色と黄色のホタルメダカを購入しました。一匹の値段は、5000円程度だったと思います。
ホタルメダカの特徴は、なんと言っても背中が光ることです。熱帯魚の中にも体が光るものとして、ネオンテトラなどがいます。それほどの光りはありませんが、日光や蛍光灯を当てると、背中の中央がくっきりと光るのです。
光 るのは虹色細胞というものがあるためです。この虹色細胞は、普通目の縁や腹の部分にあるのですが、それが背中に回ったものです。そのため、背中が光るので す。また、ひれにも特徴があります。ホタルメダカは背びれがしりびれと同じ形をしているのです。しりびれが背びれに転移したものとも考えられます。また、 尾びれはひし形をしています。
普通のメダカとホタルメダカの違いを見極めるには、背中の光り具合だけでなく、背びれの形に注目するとよいでしょう。
さて、私は購入した茶色と黄色のホタルメダカをもとに交配に交配を重ねました。試行錯誤の末、青色のホタルメダカをつくり出すことに成功しました。しかし、白色のホタルメダカはどうしてもつくることができません。
あちらこちらのメダカの養殖業者のパンフレット等の資料を取り寄せたり、淡水魚の雑誌を丹念に調べてみましたが、どこにも白色のホタルメダカはいませんでした。
私 は考えました。なんとかして、白色のホタルメダカをつくり出すことができれば、重大ニュースになるだろうと。私は魅せられたように研究に没頭しました。茶 色や黄色のホタルメダカの中にも、白色になる遺伝子がきっとあるはずです。理論上は、つくれるはずなのです。しかし、どうやっても白色のホタルメダカをつ くり出すことはできませんでした。
しばらくして、私は白色のホタルメダカを発見することになるのです。それは、全くの偶然でした。そのことについては、次号でお話することにしましょう。
<第6話 2002年9月>
前月号では、ホタルメダカについて話してきました。今月号では、ホタルメダカの中でも白色のホタルメダカについてお話しましょう。
私は、茶色と黄色のホタルメダカからいろいろな色のホタルメダカをつくり出しました。しかし、とうとう白色はつくることはできませんでした。
白色のホタルメダカとの出会いは全くの偶然でした。私がメダカの先生と仰ぐ人が、普通の白メダカを200匹持って来たのです。そのメダカを水槽に入れ、二人で眺めていたときのことです。「おっ」と先生が言いました。私はその方向を見ました。「あっ」と短い私の声。
普 通の白メダカの中に、変わったメダカがいるのです。背骨がへの字のように曲がっており、奇形中の奇形と言ってもいいでしょう。しかし、背中は光っているの です。私たちは、そのメダカを小さい水槽に移し、じっくりと観察しました。背中が光っているだけではありません。背びれがしりびれと同じ形をしているので す。奇形ではあるものの、正真正銘のホタルメダカです。しかも、色は白。
同じような白色のホタルメダカはまだいないかと懸命に探しました。「いた」二人は叫びました。他にも2匹いたのです。それも別の水槽に入れ、横から眺めてみました。やはり、ホタルメダカです。200匹の白メダカの中に、3匹の白色のホタルメダカがいたのです。
先生は、3匹の白色のホタルメダカを車で3時間かけて、「メダカの研究所」に持って行きました。その研究所では、種々のメダカをつくり出し繁殖させ、研究していたのです。研究所で白色のホタルメダカを見てもらうことにしたのです。
先生がメダカを見せると、研究員はこう言ったそうです。「とうとう出ましたか」。やはり、このメダカは私が捜し求めていたものだったのです。研究所にも、白色のホタルメダカはいないようでした。
研究員は、続けてこう言いました。「一匹いただけませんか」。どうもこのメダカは、研究に値するもののようです。メダカを持って行った先生は、研究のためならと考え、一匹を研究所に差し上げました。
残るは、白色のホタルメダカ2匹。さて、どうしたものでしょう。私はとりあえず、このメダカを繁殖させることにしました。
<第7話 2002年10月>
200匹の白メダカの中から発見した3匹のホタルメダカ。1匹は、「メダカの研究所」に差し上げました。残るは2匹。この2匹のホタルメダカをどうしたものか…・・。前号では、ここまでお話しました。今月号は、その続きです。
残る2匹の白色のホタルメダカから、多量のホタルメダカをつくり出すことが私の課題になりました。しかし、2匹だけでは繁殖は望めません。
そこで、このメダカと茶色と黄色のホタルメダカをかけ合わせて、子どもをつくることにしました。一般に親からできた子どもをF1(エフワン)と呼びます。F1をつくり出すのは、ひやひやものでした。親の白色のホタルメダカが死んだのでは、元も子もありません。
毎 朝起きるとすぐに、メダカハウスにかけて行きます。「生きていた」。一安心です。しかし、卵はまだです。そう簡単に卵は産みません。夜、メダカハウスの電 気を消すとき、また、親メダカを見ます。「明日も生きていてくれよ」。心の中でそうつぶやきます。毎日がこのような連続でした。
何日か後、私には随分日数が経ったように感じられましたが、やっと卵を産みました。これでなんとかF1をつくることができました。しかし、F1は背中が光っているものの、鼻が下がり、背骨が曲がった、言わば奇形なのです。
次 にF1同士をかけあわせ、F2(エフツー)をつくり出すことに成功しました。F2の10匹のうち1匹の割合で、形のよい白色のホタルメダカが出現しまし た。そこで、F2を多量につくり、その中から形のよいものを選別し、再び交配を繰り返します。そうしてできたF3(エフスリー)は、一応完成品と呼べるも のでした。
やがて、白色の中でも、「ミルキー」という本物の純白種をつくり出すこともできるようになりました。ただ、できたミルキーは、 100%メスなのです。これでは、ミルキー同士の交配はできません。どうしても、ミルキーのオスが必要です。今のところ、ミルキーのオスはできていませ ん。いつの日にか、オスをつくり出すべく研究中です。
<第8話 2002年11月>
これまで、「ホタルメダカ」や「ダルマメダカ」について書いてきましたが、今回は、「ホタルダルマメダカ」について、お話しようと思います。
ホタルメダカは、背中が光っており、背びれに特徴があります。他方、ダルマメダカは、普通のメダカに比べ、体長が短く腹が出ているものです。「ホタルダルマメダカ」は、「ホタルメダカ」の特徴と「ダルマメダカ」の特徴を併せ持つものです。
私が、このホタルダルマメダカを最初に目にしたのは、実物ではなく、雑誌の写真でした。ある淡水魚の雑誌に、黄ホタルダルマメダカが紹介されていました。私は、このホタルダルマメダカをつくる誘惑に駆られました。
私 の考え方はこうでした。ホタルダルマですから、ホタルとダルマを交配すればいいことになります。ただ、それだけでは、ホタルダルマは出ないことはわかって います。交配してできたF1をかけ合わせ、F2をつくる必要があります。そうすれば、F2にはホタルダルマが出るはずです。それは、私の経験からも、ま た、メンデルの法則からも言えることです。
そこで、まず黄ホタルと黄ダルマを親として交配し、F1をつくることにしました。卵は比較的簡単にとることができました。私は、ドキドキ、ワクワクしながら、成長を待つことにしました。メダカは順調に成長しました。
成長したF1は、予想通りすべて普通の黄色のメダカでした。見た目には、一般に広く販売されているヒメダカと何ら変わりがありません。このままF1を売れば、1匹20円程度でしょう。いくらたくさんF1を生産しても、利益は上がらないばかりか、元も取れません。
ただ、F1は見た目には普通種でも、特別な遺伝子をもっています。ですから、F1同士をかけ合わせれば、F2では特別な種が出てくるはずです。
F1同士を交配し、F2をつくり出しました。するとどうでしょう。予想通りホタルダルマが出るではありませんか。
私 が実際にやってみたところ、1000匹のうち、ホタルダルマは10匹程度。約1割がホタル。約1割がダルマ。残りがF1と同じ形質をもつものでした。 1000匹程度の生産ですから、この割合は、確定したものとは言えないでしょう。しかし、F2の段階で、ホタルダルマメダカをつくり出せることがわかった のです。
<第9話 2002年12月>
メダカを飼育するには、水温の管理も大切ですが、害虫や病気への対応が必要になってきます。私は、初期には、プレハブ小屋を改造し、その中でメダカを飼育していました。その頃には、メダカの飼育環境に随分頭を痛めたものです。
プレハブ小屋には小さな窓が一つ。日光はあまり入りません。それを補うべく蛍光灯をたくさんつけ、温度を上げるために灯油のヒーターをたいていました。それでも、メダカは病気になったり、稚魚が水槽ごと全滅することがありました。
その中でも苦労したのが、ヒドラの発生でした。水槽に発生するヒドラの大きさは2ミリから3ミリ。これが大量に発生するのです。ヒドラが発生すると、一夜にして稚魚は全滅してしまいます。
稚魚の入っている水槽から、小さいヒドラだけを取り出すことは不可能です。水を入れ替えようにも、稚魚だけをすくうのは、至難の業です。
人に聞いた話では、ヒドラはホルマリンに弱いようです。しかし、ホルマリンを水槽に入れたのでは、ヒドラだけでなく、稚魚も死んでしまいます。私は考えた あげく、なるべくヒドラを水槽に入れないようにすることにしました。メダカの産卵にはシュロの葉を使っていましたが、このシュロの葉やメダカをすくう網を すべてホルマリンで洗い、乾かして使うよう心がけました。しかし、それでもヒドラの発生を完全に防ぐことはできませんでした。
ヒドラを 退治する薬がないわけではありません。私は以前にヒドラに効き目があるという薬を外国から輸入していました。しかし、その薬を使う気にはなりませんでし た。この薬は、コイに有害だと聞いていたからです。コイに有害ならば、メダカにも有害なはずです。ましてや、メダカの稚魚に使おうものなら結果は目に見え ています。
ただ、ヒドラに悩まされていた私は、困り果てていました。薬は輸入したものの、使おうか使うまいか迷い、とうとう一年半も使 わず放置していました。私は決断しました。「思い切って使ってみよう」。一つの水槽だけに使えば、稚魚の被害も最小限ですみます。輸入していた薬をほんの 一滴、一つの水槽に落として様子をみることにしました。
翌朝、薬を入れた水槽を恐る恐る見ました。するとどうでしょう。ヒドラは全滅し、水槽に浮いているではありませんか。稚魚はというと、元気に水槽の中を泳ぎ回っています。
こうして、ヒドラとの闘いには勝利したものの、敵は次々と現れるのでした。
<第10話 2003年1月>
前月号では、ヒドラとの格闘の話をしました。ヒドラは、水温が高く、日当たりのよい水槽にはあまり発生しないようです。このことは、日光の重要性を私たち に教えてくれます。日光は、水温を上げるだけではありません。日光に含まれる紫外線が重要な役割を果たしてくれるようです。
紫外線というと、人体に悪影響を及ぼすもののように考えがちですが、同時に殺菌作用もあるのです。メダカに有害な雑菌も日光の紫外線で死滅することもあるのです。ですから、丈夫なメダカを育てるには、十分な日光に当てることが大切と言えます。
また、メダカに限らず、どの水棲生物にも言えることなのですが、水温が17℃前後のときが一番危険なようです。季節で言うと、春の4?5月。秋の9?10 月が飼育には一番難しい時期です。病気も発生しやすく、メダカも水カビ病や白点病にかかったりします。ですから、この時期には、ある程度メダカが死ぬのを 覚悟しなければなりません。
ただ、この時期、病気を防ぐために、適量の薬を入れておくのもよい方法です。薬として有名なものに、「メチレンブルー」や「マラカイトグリーン」などがあります。これらの薬はペットショップにも売られていますので、簡単に入手することができます。
それでも病気になるようでしたら、ヒーターで水温を30℃に上げ、薬を使うとよいでしょう。水温が上がり、雑菌の力も弱まり、薬の効き目がよくなります。
水温や水質の管理に十分心がけ、飼育に難しい時期を乗り切りましょう。
<第11話 2003年8月>
本年2003年に新発売いたしました「ピュアブラックメダカ」についてお話したいと思います。このメダカを作るに至った経緯はこのようでした。
3年前のことでした。一匹の真っ黒いメダカを発見。普通の茶メダカではありません。普通の茶メダカは保護色の機能をもつため、入れた容器の色により体色が変化します。
しかし、発見したメダカは、真っ黒なのです。白い容器に入れても、体色が変化しないのです。その他にも特徴がありました。頭が小さく、目が点のように小さいのです。体も他のメダカに比べて長いようでした。私は、このメダカを「黒べえ」と名づけました。
私は、この「黒べえ」に非常に魅力を感じました。そこで、このメダカを交配し、繁殖させ、固定化したいと思いました。ただ、私より先にメダカを飼育してきた先輩達は、無関心でした。一言こう先輩に言われました。「このメダカは奇形だから、止めておいた方がいい」
そう言われれば、意地になるのが私の性分。
どのメダカにでもいいから、この「黒べえ」の遺伝子を残したいと思いました。他のメダカと交配したところ、ほんのわずかですが卵がとれました。その数、2、3個だったように記憶しています。
卵は孵化しましたが、稚魚はなかなか体が大きくなりませんでした。アルビノメダカの稚魚もなかなか大きくなりませんが、それと同じです。
それでも、続けて他のメダカ2、3匹と交配し卵をとりましたが、やがて、その「黒べえ」は死んでしまいました。
やっと何匹が産まれたF1。大切に大切に育てました。
1年後、F1同士を交配し、F2をつくることに成功しました。F2をじっと観察していると、真っ黒なメダカを1、2匹発見。あの「黒べえ」です。F2で 真っ黒なメダカが出てくることは理論上はわかっていましたが、実際にそのメダカを目にした私は、思わず、「やったー!」と心の中で叫びました。
また、そのF2を大切に育てました。そして、ありとあらゆるメダカと交配しました。なんとか、この「黒べえ」の遺伝子を他のメダカに移し、残すためです。 交配したメダカは、茶色の普通種、ダルマ、ホタル、アルビノホタル、アルビノダルマなどなど。あらゆるメダカと交配を重ねること2年。試行錯誤の連続でし た。
その結果、やっと普通種の形をした「黒べえ」が固定化しつつあります。
この「黒べえ」を発売するにあたり、もっと良い名 前はないものかと思案しておりました。このメダカは、体型にも特徴があるのですが、何と言っても、最大の特徴は、その黒さにあります。保護色の機能をもた ず、全くの純粋な黒色です。そんなことを友人と話していたときのことです。「純=ピュア、黒=ブラックだから、ピュアブラックはどうだろう」ということに なりました。
そのときから、このメダカは、「黒べえ」改め、正式に「ピュアブラックメダカ」という名前になりました。
現在、 普通種のピュアブラックメダカは販売しております。このピュアブラックメダカ同士を交配しますと、素晴らしいメダカが産まれます。産まれるメダカは、普通 種(フルカラー)、ホタル(フルカラー)、ダルマ、ホタルダルマ、スーパーホタル、目点スーパーメダカなどです。また、100匹中、4、5匹の割合で、 ピュアブラックメダカが産まれます。
なお、ピュアブラックメダカのダルマ、ホタル、ホタルダルマは、2004年発売予定です。ピュアブラックダルマメダカをご覧になりたい方は、当店のホームページの「メダカ王国(ビデオ画像)」をクリックしてください。動画が入っています。
<第12話 2003年9月>
前号で述べました経緯により、「ピュアブラックメダカ」作りは軌道に乗ってきました。
私の今現在の思いは、新たなるメダカの新種作りへと発展しています。
昨年秋より、約70種類のメダカを交配してきました。今は、それらから作り出したF2の中で、新種探しに没頭しております。毎日が交配、選別の連続であ り、その中に、喜びや感動を見出しております。できることなら、毎日、一日中、メダカハウスの中にこもり、新種作りのための研究をしたいくらいです。
私が今取り組んでいる新種は、黄金、シルバー、赤色、ピュアブルーなどの体色をしたメダカです。また、尾びれに特徴のあるメダカを作りたいとも思っています。
例えば、金魚のような三尾をもつものや、グッピーのような長く大きなひれをもつものです。
さらに、強い光を放つ全身プラチナのようなメダカや全身にラメが入ったようなメダカを作り出したいと思っています。
お客様の中には、2色メダカをご覧になった方もあることでしょう。私も、黄黒、青黒の2色メダカを実際に見たことがあります。ただ、これらのメダカは保護色のため、入れる容器によって、色が薄くなってしまいます。これでは、本物とは言えません。
私が目指すのは、保護色の機能をもたない2色メダカです。それも、紅白の2色メダカに挑戦したいと思っています。色の組み合わせから言えば、紅白に勝るものはいないでしょう。
さらに、将来は、2色にとどまらず、3色メダカも作ってみたいと考えています。
今まで私が作り出した新種の中で、今年の夏、ほぼ固定化しているメダカとしては、次のようなものがあります。
「うす黄金ホタルメダカ」「目点パールスーパーホタルメダカ」「目点シルバーメダカ」などです。
もちろん、固定化しつつあるものには、「ピュアブラックメダカ」も含まれています。
今年の秋までに、どれだけの新種ができるか楽しみにしておいてください。
また、皆様の中で新種のメダカや変ったメダカを発見された方がありましたら、「めだかの館」まで、ご一報ください。是非、見せていただきたいと存じます。
<第13話 2003年10月>
メダカがブームになってから、何年になるでしょうか。このブームは、単なるブームで終わるのでしょうか。いや、そんなことはありません。
新種メダカが登場し続ける限り、メダカブームは、ますます熱を帯びてくるものと思われます。
日本では、鯉や金魚が長年にわたり改良に改良を重ねられ、愛好家を楽しませています。おそらく、メダカもそのようになり、愛好家が定着することでしょう。また、私は、それが現実になるよう努力を続けるつもりでおります。
将来的には、様々な人々がメダカの改良を行い、そのメダカを発表する場として、「メダカの品評会」を開催したいとも考えております。
また、余談になりますが、メダカにかわいい名前を付けたいとも思っています。皆様の中で、かわいい名前を思いつかれた方がありましたら、お知らせ下さい。「めだかの館」では、メダカの愛称を募集しております。
<第14話 2003年11月>
今回は、「アルビノホタルダルマメダカ」について書いてみようと思います。私が、最初にその名前を知ったのは、2001年のこと。あるパンフレットでした。
パンフレットには、こう書かれていました。
「メダカの最高峰 アルビノホタルダルマメダカ」その値段を見て、ビックリ。1匹が14万8千円。残念ながら、写真はのっていませんでした。さて、それからです。私のアルビノホタルダルマメダカへの挑戦が始まったのは。
当時、アルビノの普通種も高価でした。これは、「第三話」にも書いたことなのですが、アルビノの普通種は、1匹が5万円。それを10匹仕入れました。合計で50万円の出費でした。
しかしながら、そのアルビノが7匹死亡。残るは、3匹。その3匹を使って、アルビノホタルダルマメダカに挑戦となったわけです。
考え方は、こうでした。まず、アルビノとホタルを交配し、アルビノホタルをつくります。同時に、アルビノとダルマを交配し、アルビノダルマをつくる。このようにしてできた、アルビノホタルとアルビノダルマを交配すれば、アルビノホタルダルマができるはずです。
そこでまず、アルビノとホタルを交配しました。アルビノは、卵を浮き草やシュロに産みつける習性はありません。卵をそのまま、産み落とすのです。それも一 個ずつ産み落とすのです。普通のメダカでは、いくつかの卵がかたまっているのですが、アルビノには、そういうことがないのです。
それに、卵を産む時間帯が一定していません。普通、メダカは早朝に卵を産むことが多いのですが、アルビノはいつ産むのかわからないのです。
したがって、水槽の中をいつもきれいにし、常時観察し、いつ産まれても卵が発見できるようにしておかなければなりませんでした。
アルビノとホタルを交配してできたF1は、ごく普通の茶メダカのような格好をしています。目も赤くありません。しかし、ここであきらめてはいけません。F1で、目指すアルビノホタルが出なくても、F2では、出てくるはずです。
F1同士を交配したところ、確かにアルビノが出ました。しかしです。アルビノホタルが出る確率は百分の一程度です。後は、アルビノの普通種が出ます。F2 はできたものの、これが非常に弱いのです。稚魚のうちに多くが死んでしまいます。生き残ったものも成長が非常に遅いのです。
アルビノとダルマの交配も同様でした。幾多の困難を乗り越え、やっとアルビノダルマをつくることに成功しました。
さらに、アルビノホタルとアルビノダルマを交配し、同様にして、アルビノホタルダルマを完成させました。
当時は、早くアルビノホタルダルマをつくりたい一心でしたので、冬にはヒーターで水温を上げ、蛍光灯も24時間つけっぱなしの状態でした。
私が、アルビノホタルダルマメダカ作りに夢中だったころ、2001年当時でしたが、「めだかの館」には、多くのマスメディアが取材に来ました。地元テレビ局も、ほとんどが取材に来ました。
当時は、メダカが絶滅危惧種に指定されたこともあり、また、変りメダカとして改良メダカに注目が集まりつつあるころでした。
私は、もともとは、さつき屋で、さつきを始めて25年になります。その間、さつきに関しては、マスメディアの取材など受けたこともありませんでしたが、メダカを始めてわずかの間に、多くの取材を受けたものです。
<第15話 2003年12月>
やっと作り出したアルビノホタルダルマメダカ。値段は、1匹数万円にしたと思います。数万円でも、私のそれまでの苦労に比べれば安いくらいのものです。しかし、当時は、1匹数万円のメダカが売れるはずもなく、店の「看板」として、陳列しておりました。
ところが、忘れもしません。2001年8月13日、午後4時ころのことです。ある来店者が、「アルビノホタルダルマを5ペアください」とおっしゃる。
最初、私は、そのお客様が桁を一つ間違えているのではないかと思ったのです。1匹数千円ならば、計10匹で数万円ですから、買えない値段ではありません。
しかし、お客様に値段を確かめるのも失礼です。私は、緊張しながら、5ペアを水槽からすくいあげました。
恐る恐る、お客様に、本当の金額を言いました。
ところが、お客様は、驚きもせず、財布から1万円札を次々出されるのです。札は、すべて新札でした。私は、正直言って、ビビりました。
後でわかったことなのですが、そのお客様は、当店のアルビノホタルダルマメダカを見るのは初めてではありませんでした。当店が、いつも出店をしている催し 物会場で、すでに目にされていたのです。ですから、買う気になって、当店までこられていたのです。当然、財布の中に、かなりの額のお金が、用意されていた ことでしょう。
そのお客様は、メダカ専用の水槽を特注でつくらせているとのことでした。長さ1メートルの水槽です。1メートルと言えば、かなりの大きさです。その水槽に、メダカ10匹では少ないことでしょう。もっとアルビノホタルダルマメダカを買われるかもしれません。
案の定、4日後の8月17日、また、ご来店。アルビノホタルダルマメダカを、もう5ペア買われて行かれました。
話は少しかわるのですが、当時のアルビノは、弱かったのですが、本当に透明でした。透明度が高く、血管の色で、薄いピンクに見えたものです。弱いだけに、高値で取引されるのも当たり前でした。
しかし、最近のアルビノは強くはなりましたが、黄色がかった色になってしまいました。黄色がかったアルビノは強く、繁殖力は旺盛です。そのため、メダカの知識があまりなくても、繁殖が容易になりました。
他店で安売りされているアルビノを見ることもありますが、ただ目が赤いだけで、黄色がかったものが多いようです。これでは、本物のアルビノとは言えません。
当店のアルビノは少し高価ですが、美しい透明感を持ち、泳ぐ姿も華麗です。
今でも、本当に、透明なアルビノをつくるのは至難の業であり、高値で取引されるのも当然と言えましょう。
<第16話 2004年8月>
ピュアホワイトダルマメダカ♀ メダカの交配を始めた頃は、親メダカのシルキー(うす黄メダカ)、ミルキー(♀白、♂うす黄)10匹を購入。ミルキーの名前を知ったのはこのときです。
2?3年後、色がどう違うかわからずにメダカクリスタルホワイトに出会い、50匹購入。数ヶ月たっても卵が一切産まれない。全メダカを調べてみると、全部 メス。ショックでした。そこでクリスタルホワイトは当店から消え、私の先輩が約10年、ミルキーのオス・メスの純白を目指し交配を続けていましたが、純白 のオスメダカは固定できないとのことでした。
私はその頃、白ホタルメダカを発見(メダカの館通信 第6号7号に掲載)。奇形でシルキーメダカです。色は問題ではありません。白ホタルメダカで良い形をしたメダカにするため、交配を繰り返しました。
2年前、平成14年その数千匹のホタルメダカの中に約1センチほどのオスメダカらしきものを発見。大切な1匹です。死なせることのないよう大事に大事に育てました。そのメダカが大きくなっても純白であること、オスであることを願いながら。
やがて、そのメダカがメスをおいかけるようになりました。相手探しです。メスの純白はたくさんいます。相手はミルキーの半ダルマにしました。ホタル♂×半ダルマ♀から生まれるメダカは、普通種、ダルマ、ホタル、ホタルダルマの予定です。
1対1交配は、毎日が勝負です。卵一個残らず、根気よく卵を別水槽に移します。はじめの頃は、無精卵が多いようでした。やがて、有精卵が産まれ始め、初めに産まれた無精卵のカビが移らないよう、有精卵は薬につけ、殺菌してから水槽に入れます。
約10回取れば成功です。後は、2、3ヶ月待ち、F1の子供が孫メダカを産んでくれるのをひたすら待ちました。
できました。99%純白です。数百匹の中でピンクが1匹で、ダルマ、半ダルマ、ホタル。その中には数匹のホタルダルマ。あまりの白さにびっくり。一人ニヤニヤしたものです。
たった1匹のオスを発見したことにより、白メダカ全種類の純白化に成功しました。
現在、青メダカで同じことをしています。みなさん、青メダカのオスを見たことがありますか?オスはすべてグレーです。青メダカは95%できましたが、まだ、オスがグレー色です。スカイブルーは(オスにおいてもブルー)平成17年にできると思います。
メダカはすべて保護色を持っています。入れる器に体色をあわせ、天敵より身を守っています。白メダカは白色の色素しか持っていません。シルキーは、オス、 メスとも黄色の色素を持っています。ミルキーのオスは、数パーセントのメダカにおいて黄色の色素も持っています(婚姻色が尾びれで黄色に変色します)。
今までの数万匹のピュアホワイトの全種類のオスのほとんどに婚姻色が見られません。器によってはピンクに見えます。これは血管が浮きでて見えるためです。ピュアホワイトの色を確かめるには、黒か青の器で見てください。よく白さがわかります。
皆さん、白メダカの、普通種以外のホタル、ダルマ、ホタルダルマのオスを見てください。ほとんど純白はいません。
当店のピュアホワイトは白系全種純白です。数万匹のピュアホワイトを生産しましたが、固定率99%です。(純白度)
一つ問題は、当店から出荷した時、ピュアホワイトの名前をつけていますが、業者の間で生産され、ミルキーの名前で販売されているものがあります。当店のピュアホワイトを購入し、またその店でミルキーを買うと、同じメダカということが起こるかもしれません。
私は学者ではありません。白メダカの中の白色の色素が何%で黄色の色素が何%かはわかりません。
ピュア(純)という名前も、ピュアという響きがかわいいので、メダカの名前にいいと思いついたものです。
現在、白メダカにおいて、普通種、ダルマ、ホタル、ホタルダルマのオス全部、純白というメダカはほかにないと思っています。
ピュアホワイトは、白メダカ全種で純白です。固定率99%です。ぜひ他の白メダカと比べてみてください。
ピュアホワイトについて、さらに詳しく知りたい方は、当店までお電話ください。直接ご説明したいと存じます。
<第17話 2005年5月>
朝晩の気温差が大きいこの頃ですが、皆さんお変わりありませんか。
このところ忙しくしており、「めだかの館 通信」が途絶えております。すみません。ようやく少しだけ書く時間ができました。
最近、さつきの方は人に任せっきりで、メダカの世話ばかりしています。朝3時過ぎには起床します。起きるとすぐに、メダカハウスに直行。この時間、メダカも熟睡中かもしれません(笑)。寝不足のメダカを前にして、選別に夢中になっています。
今回は、特に「セルフィンメダカ」に絞って書いてみようと思います。セルフィンメダカの特徴は既にご存知でしょう。背びれが2枚に変化しており、1枚はヨットの帆のように立っています。熱帯魚などでは、よく見られるものです。
あるときのことです。先輩より6匹のセルフィン(兄弟メダカ)を預かりました。私もセルフィンを2匹もっていました。それらのセルフィンをもとに、交配を始めることにしました。現在、F2→F3の段階です。
交配は、♂1対♀1です。これを全部で15水槽つくりました。いくつかの水槽では失敗しましたが、成果が上がっている水槽もあります。少し紹介しておきます。
水槽?・15。2004年に、セルフィン×ピュアホワイトホタルの1対1交配。交配・選別を繰り返し、F3まできました。F3では、20匹すべてが全部セルフィンとなりました。大感激です。20匹の中から、ベストなものを4匹選び出し、1対1交配を2水槽作りました。
水槽?・13では、2004年、シルバーホタルダルマ×セルフィンの1対1交配。交配・選別を行い、5対7で水槽セー13?3を作りました。その中から、チョキメダカを発見。現在、1対1で交配を開始しています。これは楽しみです。
水槽?・14。2004年、シルバーメダカ×セルフィンの1対1交配。F2で、スモールアイが17匹、ピュアブラックが3匹産まれました。この計29匹で、水槽?・セ?14?3を作り、親メダカとしました。
水槽?・9は、セルフィン×ピュアブラックです。2004年交配。現在、ピュアブラックセルフィンが2匹できています。
?・14、?・9の水槽で、F1においてピュアブラックが出現しています。つまり、これらのセルフィンは、ピュアブラックの遺伝子を持っているということです。今までの経験をもとに、全種類のセルフィンを作りたいと考えています。
さて、話は変わるのですが、メダカのネーミングについてです。例えば、ピュアブラックセルフィンホタルダルマメダカがいます。当園の記号で言いますと、 PB・SF・HDとなります。どうもアルファベット記号で表すと感じが出ません。また、日本メダカの名前に長いカタカナの名前をつけるのもどうかと思って います。セルフィンという名前も私としては、好きではありません。「めだかの館」のホームページをご覧の皆さん、何かいいアイデアはありませんか?
ただし、セルフィンを「角(つの)メダカ」と呼ぶのはやめてくださいね。というのは、ある通販サイトで、先輩より預かり、私が交配し作出したセルフィンを 「角(つの)メダカ」という名前で売り出しているのです。先輩にも申し訳ありません。この名前を聞くと、私に角がはえてきそうです。
何かいい名前が浮かびましたら、「めだかの館」まで投稿してください。投稿採用の方には、セルフィン系メダカをプレゼントしたいと思っています。
ところで、「めだかの館」の会員の方で、尻ビレにセルフィンが出た方がいらっしゃいましたが、どうなりましたか? 当園のセルフィンと交配すると、上下のヒレがセルフィンのメダカができるかもしれません。
上下のヒレがセルフィン、体色が琥珀、体形がホタルダルマのメダカができたらすごいですね。想像するだけで、ワクワクします。
<第18話 2005年6月>
楊貴妃 赤メダカへの挑戦!鯉・金魚の赤に近づけたい
2003年夏、7月のことです。黄金系メダカを黒色の入れ物で飼っていました。その中に、変わったメダカがいました。変わった色です。しばらく成長するのを待ちました。9月に本格的にチェック。
やはり、変わった色です。黒茶?黄茶?何色と表現すればいいでしょう。今までに見たことのない色。変わったメダカを見つけると、交配したくなるのが私です。遺伝すれば面白いことになりそうです。
このメダカを元に、交配をはじめました。何度も交配を繰り返し、あるメダカができました。そのメダカについては、次の通信で書きますが、その後できたのが、「楊貴妃」の「親メダカ」です。
「親メダカ」は緋色が強く、とても目立っていました。交配をする前から、作出するメダカのニックネームが思い浮かんでいました。名前は、神秘的な赤の美しさから、世界三大美女の一人、「楊貴妃」としました。
話 は以前に戻るのですが、5年前、私は「赤メダカ」づくりに挑戦していました。赤っぽい色のメダカを選別し、交配を繰り返しました。しかし、F4において色 が薄れ、ピンクメダカになってしまいました。F4まで努力したのに、だめだったのです。私は嫌になり、「赤メダカ」をあきらめました。
今回は、それ以来の赤への挑戦となったのです。先ほど述べた「親メダカ」を1対1で交配し、F1を6匹つくりました。すぐに、「親メダカ」を「めだか研究会」のSさんに預かっていただき、F1を作ってもらいました。
私 は自分で作ったF1で交配を繰り返しました。Sさんには、SさんのF1での交配をお願いしました。その結果、Sさんの水槽からは、スモールアイが3匹産ま れました。私の水槽からは、ダルマ、ホタル、ホタルダルマが産まれました。これで、「楊貴妃」の全種類ができたことになります。
しかし、この赤に満足することなく、今もより鮮やかな赤を目指して努力しています。最終的には、鯉や金魚に見られるような赤を作りたいと思っています。
現在、「楊貴妃」の水槽は13あります。13の水槽に記号をつけ、交配をしています。何メダカを交配中でしょうかネ! これは、今の所、秘密にしておきます。また、新たな発見がありましたら、報告します。
楊貴妃の特徴はこうです。小さいときは黄色ですが、Mサイズを越した頃から、婚姻色が緋色に変わっていきます。3代目の親でも色落ちがありません。固定率99%。色むらもありません。
「めだかやドットコム」の青木様に、「楊貴妃」の普通種、ホタル、ダルマ、ホタルダルマ、スモールアイをお送りしました。現在、写真撮影・新種審査をお願い中です。
<第19話 2005年7月>
ツトム君にはビックリ!
昨年8月頃、ご来店。親子三人。20代の男性(ツトム君)とご両親。
それ以来、月に一度ぐらいの割で来店され、何種類かのメダカを買っていただきました。私がZメダカを発売すると、すぐに4匹お買い上げ。
今年7月3日、育てたメダカを見てほしいと来店。16匹のメダカでした。小錦半ダルマ、スモールアイダルマ、スモールアイ、ピュアブラック、スーパーピュアブラック、小次郎でした。
どうやって作ったのでしょう。Zメダカ4匹から約100匹産まれ、そのうちの16匹だそうです。
続く7月17日に持ってきたのが18匹。私もビックリ!。約100匹中34匹がピュアブラック系でした。
「純黒はいますか?」とツトム君。「スーパーピュアブラックもいますよ」と私。
ツトム君は純黒を確認すると、満足したとのことで、全部「めだかの館」に進呈してくれました。
私のお返しは、未来のメダカ。琥珀スモールアイ×琥珀スモールアイのF1の約15匹の水槽を私と半分にしました。
ツトム君の話では、はじめの頃に買った琥珀から4匹のスモールアイが産まれているとのことです。
どうなっているのツトム君!。当店での新種メダカ作り一番乗りはツトム君かな?
彼から、ピュアホワイト、琥珀、その他たくさんのメダカをいただきました。
<第20話 2005年8月>
8月も下旬に入りました。朝夕は、めっきり涼しくなりました。皆様はお元気のことと拝察いたします。
さて、<メダカの館 通信 第17号>で、セルフィンのニックネームを募集しました。私は、以前、セルフィンを正宗と呼んでいました。日本の名刀、正宗です。
その後、数人の方より、伊達政宗のヨロイとカブトに三日月か刀のような飾りがあり、それがセルフィンのヒレに似ているとのご意見をいただきました。
なるほどと思った私は、セルフィンのニックネームを正宗改め政宗にすることにしました。
貴重なご意見をいただいた広島のNさん、埼玉のFさんには、政宗を送らせていただきました。ありがとうございました。
これからも、メダカのニックネームでよいものがありましたらお知らせください。首を長くして待っております。
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