改良メダカ品種分類案 2品種分類案 〜命名法〜
 

2.品種分類案

2.1分類案の留意点

■共通用語の制定について
品種分類案の作成に際して,改良メダカの特徴を表現する用語の統一が品種分類案作成の第一歩であると判断しました。統一用語として,後述する形質や形質補足,共通補足などのグループを作り,それぞれの用語の名称と定義を制定しました。
 
例:黒いまだら模様のメダカ
現状|斑,錦,墨,など → 提案|斑
 
統一用語の制定(すなわち形質の分類と定義)によって次の効果が見込まれます。
  • 愛好家同士の短時間でのコミュニケーションが容易となり,交流が盛んになり飼育技術の向上につながる
  • 新しい特徴と既存の特徴の差が明確になる。
  • 新品種作出の手助けとなる。
  • 品評会にて,審査員が作出者の意図が読み取りやすくなる。
 
■形質名の命名について
特徴の名前(形質名)は一部分かりにくいものがあるため,初心者が容易に形質を理解するのを手助けすべく,形質名からはニックネーム性を排除し直感的に特徴が想起できる名称もしくは他の観賞魚において既に使用されている名称を採用しました。後述しますが,ニックネーム自体は改良メダカの大切な文化なので,ニックネーム自体は排除せず形質名とは分離して残す,ということで整理しました。
 
例:黒いまだら模様のメダカ
現状|錦(織物の名前?どんなメダカなの?) → 提案|斑(ブチ柄を示している。これなら,模様だとわかる。)
例:朱赤体色のメダカ
現状|楊貴妃(体色の名前ではない?楊貴妃色って何色?) → 提案|朱赤(これなら,体色だとわかる。)
 
■品種分類案作成に際して
品種分類は以下の点に留意しながら,議論を進めました
  • 形質や形質補足の名称は「初心者がわかりやすい事」を最優先しました。すなわち,形質名からニックネーム性は排除し,直感で判断できるもしくは他の観賞魚用語を踏襲した用語を採用しました。
  • 形質や形質補足の必要条件は「目視で判別可能であり子孫に遺伝する特徴」としました。すなわち,目視で判別できない耐病性などの特徴は,本案においては改良メダカにおける形質には該当しないこととしました。また,子孫に遺伝しない特徴についても形質には該当しないこととしました。
  • 形質や形質補足の分類や定義の決定に際しては,公平性を保つため他の観賞魚業界の慣例及び改良メダカ業界の慣例をバランスよく採用しました。
  • 品種名の名付け方は形質の組み合わせというシンプルなものとしました。すなわち,新品種とは,新しい形質の組み合わせを持ったメダカもしくは新しい形質を持ったメダカのどちらか,としました。
 
これらをもって品種分類を進めたことにより,以下の特徴を持った品種分類案を作成することができました。
簡易性:初心者でもわかりやすい
納得性:根拠のある分類
柔軟性:改良メダカの進化に対応できる
永続性:簡素な品種分類法なので継続して管理ができる
 

2.2改良メダカの特徴の分類

 
 改良メダカに見られる特徴を「形質」「補足(形質補足と共通補足)」「珍種」の三つに分類しました。


 

 
■形質について
改良メダカの特徴を明確にするため,現在確認されている改良メダカの特徴を7グループに分け,それぞれのグループ内に形質を設定しました。ここでの形質とは,目視で判別可能であり,子孫に遺伝する改良メダカの特徴と定義しました。
 
■形質補足について
新しい形質や品種に柔軟に対応する為,形質の下位カテゴリに形質補足を設定しました。これは,改良メダカの進化に柔軟に対応することを目的としています。例えば,新しい特徴のメダカが作出された場合,その特徴はまず形質補足に分類され,累代繁殖による特徴の安定化や認知度の向上などを経て形質にランクアップする,という仕組みです。
ただし,むやみに形質の数を増やすことは改良メダカの特徴のわかりにくさを助長し,改良メダカの文化形成の妨げとなる可能性があるため,形質補足が必ずしも形質にランクアップするとは限りません。例外として,新しく作出された改良メダカの特徴が,既存のどの形質にも属さないことが明らかであり,かつ改良メダカの進化に重要な影響を与える特徴として認められる場合に限り,形質補足を経ずに形質として分類場合があります。例えばブラックリム1)や半透明鱗2)が該当します。
 
1)2)これらの形質については,形質名が付けられていなかっただけで,特徴としては長年認知されてきたものである
 
■共通補足について
形質補足は原則各形質の下位カテゴリに分類されます。一方,複数の形質にまたがって関連のあるもしくはどの形質に分類するかの判別が困難な形質補足については,新たに共通補足というカテゴリを設け分類しました(例:ヒレ美,ヒレ光など,どの形質のメダカにも発現する可能性がある特徴)。その他に、スピアテールなど明らかに補足ではなくヒレ変化グループの形質に分類するのが妥当な特徴でも、固定率や認知率などの観点からその特徴を形質と認めるにはまだ早いと判断した場合には、共通補足に分類することとします。
形質補足と共通補足は同レベルの関係にあり,どちらも形質の下位カテゴリにあたります。形質補足と共通補足を併用する事で,新しい特徴が発見された際に,スムーズな特徴の認定が可能となります。
 
■珍種について
一点ものとして発見され,次世代に遺伝が確認されない特徴を持つメダカは「珍種」にカテゴライズされます。珍種は,形質一覧とは独立の関係にあります。進化とともに次世代に遺伝が確認された場合,形質もしくは形質補足にランクアップされる可能性があります。
 

2.3品種分類案の概要と命名法

■基本ルール
  • メダカを販売や出品する際は「?品種名?補足(形質補足、共通補足)?ニックネーム」の三つを併記できます。
  • ??は任意です。
  • 品種名は形質の組み合わせで表現します。
  • 組み合わせ順は,形質一覧表の上から順番に並べます。
  • 形質にて説明できない特徴は補足にて説明します。
  • 形質補足の書き方は「形質1(形質補足1),形質2(形質補足2,形質補足3)」とします。
  • 共通補足の書き方は「共通補足(共通補足1)」
  • 形質補足や共通補足に記載されていない用語は使用できません(例:体色(ゴールド))。
  • ニックネームには何を書いてもよいこととします。
  • 体色が二色以上の場合,体色を二つ並べて表記します(例:白朱赤)。ただし,斑やブラックリムなど,形質の特徴として色を発現するものは体色として扱いません(例:白斑メダカを白黒メダカと表記しない)。
  • 体色が二色の場合に限り,ブラックを「黒」と表現3)します(例:黄ブラックブラックリムメダカ→黄黒ブラックリムメダカとする)。
  • 同じグループの形質が二つ以上ある場合は,表の上から順に表記します(例:出目と目前の形質を持つ場合「出目目前メダカ」とする)。
 
3)ブラック体色と黄体色とブラックリムを同時に持つ品種の場合「黄ブラックブラックリム」となりわかりにくくなるため。
例:アオメダカ
品種名:青メダカ
補 足:青(パールブルー)
ニックネーム:
 
例:オロチ
品種名:ブラックメダカ
補 足:ブラック(背地反応無し)
ニックネーム:オロチ
 
例:3色ラメ
品種名:白朱赤ラメ斑メダカ
補 足:ラメ(多色)
ニックネーム:3色ラメ幹之
 
例:4色幹之
〇正しい例
品種名:青体外光体内光メダカ
補 足:体外光(二色),体内光(青白,オレンジ)
ニックネーム:4色幹之
 
×誤った例
品種名:青体外光(2色)体内光(青白,オレンジ)メダカ
理 由|品種名に形質補足が混ざっている。品種名は形質の組み合わせのみで表現する。
 
例:青体外光ラメダルマ
品種名:青体外光ラメダルマ
補 足:体外光(二色,頭光),ラメ(多色),ダルマ(半ダルマ)
 
例:青体外光ラメダルマの頂点眼
品種名:青体外光ラメダルマ
補 足:体外光(二色,頭光),ラメ(多色),ダルマ(半ダルマ),共通補足(頂点眼)
 
 
詳細な活用方法については,品種分類案を実施した現場からの意見を反映させながら適宜修正することとします。
 
 
 
 
 

2.4品種分類一覧表(案)



注)
形質や形質補足において,改良メダカ界で頻繁に使用されている用語を変更したものに関しては,括弧付で記載しました。これは,本表を見た際に,従来の用語と新しい用語が一目で把握できるように配慮した結果であるため,実際の品種名を名付ける際には使用できません。
例:品種名「青半透明鱗メダカ」とは記載できるが,品種名「青オーロラメダカ」とは記載できない。



 

 

「改良メダカ品種分類案」はこちら↓↓↓
http://jma-medaka.jp/pdf/1saishinhinnsyubunnrui.pdf

 



改良メダカの体色関連の形質一覧
茶 黄 白 青 ブラック
黄金 琥珀 朱赤 オレンジ ピンク

改良メダカの透明鱗関連の形質一覧
透明鱗 半透明鱗      

改良メダカの目の変化関連の形質一覧
アルビノ スモールアイ 出目 パンダ 目前
ビッグアイ        

改良メダカの虹色素胞関連の形質一覧
ラメ 体外光 体内光 全身体内光 腹膜光

改良メダカの柄関連の形質一覧
斑 ブラックリム      

改良メダカのヒレ変化関連の形質一覧
セルフィン 菱尾 マルコ メラー スワロー
ヒレ長 ロングフィン      

改良メダカの体型関連の形質一覧
ヒカリ ダルマ ヒカリダルマ    

※本記事は、改良メダカ品種分類案の普及を目的として、日本メダカ協会の許可を得て写真や文章を掲載しています。

 

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